The cause is your words 2
一層の沈黙。
黙るというより、2人とも声が出せずにいる。
「ちょっ…異議あり!何だよそれどういう…」
重たい雰囲気と、沈黙を破ったのは成歩堂で。
「言葉の通りだ」
「必要に決まってるだろ!何でそんな話になるんだ」
「…先程から訊いていた」
…正直、むっとした。
繋がらない話を平然と掲げてくる事にも。
…全く、心中を察してくれていない事にも。
「…どれだけ僕が言いたい事我慢してると思ってるんだ」
「…」
御剣は、言葉が零れるのを何とも言えない複雑な表情で聞いている。
「好きな奴と離れて平気でいられるわけないだろ!時々考えるよ、こんな辛い思いしたくないって!
でも仕方ないだろ、お前が好きなんだから!…行くなよ。僕から離れるな…」
一息で捲くし立てて、口を結ぶ。
昂ぶった感情のせいで、呼吸が荒い。
言ってしまった後の後悔は、計り知れなく。
…でも。
どこかすっきりした気も、する。
何処までも困らせるようなセリフ。
再び訪れた沈黙に、最悪の事態も覚悟した、成歩堂に掛けられたのは。
「…済まない…」
そんな、穏やかな声。
御剣の方に向き直ると、罪悪感たっぷりの表情。
眉を顰めるのはいつもの癖だろうが、泣きそうな色も湛えていて。
「…え?え?」
全く予想もしていなかった反応に、正直戸惑う。
そんな成歩堂を知ってか知らずか。
「…実は、」
と。
御剣が切り出す。
「…うん?」
「手続中なのだ…」
言いにくそうな口調よろしく、視線は思い切り泳いでいて。
けれど、それだけでは察する事すら、出来なくて。
「…何の…?」
「…帰国する為の、だ」
「え…?」
驚いて、成歩堂が硬直する。
そして、口の中で御剣の台詞を反芻して。
「ええええええ!?」
言葉を噛み砕いた事で理解したのだろう。
成歩堂が耳も痛くなるほどの声を上げて。
御剣はその声にたじろいで、びくりと肩を震わせた。
「……煩い……」
「だ…だって!何で…」
疑問を口にすると、御剣の顔に朱が走る。
…赤面しているのを少しでも隠そうと、俯いたまま口元を片手で覆っていた。
「…その…」
そう言ったっきり。
黙ってしまう御剣の顔を覗き込んで。
「……御剣?」
声を掛けると、ふい、と顔を逸らされて。
負けじと、視線で追いかける。
「どうしたの?」
「…迷っているのだよ。……戻ってくるべきか…」
「……じゃぁ、何で帰国の手続きを?」
更に瞳を逸らそうとする御剣を逃がすまいと。
顔ごと自分の方を向かせた。
射るように真っ直ぐ向けられる視線。
ともすればキスすら出来そうな至近距離に、逃げ出したくなる。
共に。
その成歩堂の行動は、確実に御剣を追い詰めていて。
言わざるを得ない状況。
逃げ場が無いような錯覚に捕らわれて。
「…キミがいるから」
「…え」
「それだけでこちらに戻ってくる決意をした。
…たったそれだけの事で…帰って来て良いものか、迷って…いる」
「みつるぎ…」
言葉の威力とは、絶大で。
瞳を逸らすことも出来ずに呟かれた御剣の言葉に、成歩堂は呆気にとられて。
「…だから!キサマに必要ないと言われてしまったら帰ってくる意味も何も…」
続く言葉を、言わせなかった。
キスで言葉を制する。
言葉の威力は計り知れなく。
どれだけ可愛い事を言っているか。
解っているんだろうか、コイツは。
「…ッ!調子に乗るな!」
「痛ッ!」
御剣の肘が、見事成歩堂の鳩尾にヒットして。
蹲る成歩堂を一瞥すると。
「…自業自得だ、馬鹿者」
投げ捨てる言葉の割に、照れているのは明らかで。
何だか、どうしよう。
痛い事も気にならないくらい。
幸せで堪らない。
何だか、ろくでもない話になってしまってすみません…。
タイトルも変わりました…。
2人とも別人になってしまってすみません……。
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