The cause is your words 1

 


「…すぐ、帰るの?」

皆で食事をした後。

切り出すのが怖くて、でも訊かないといけなくて…情けない程の小さい声で呟く。

「む?」

「また、行っちゃうだろ…あっち」

情けない。

みっともない。

…声が、自然と小さくなる。

「…4日後。あちらに戻る」

そんな成歩堂をどう思っただろう。

御剣が、やや淡々とした声で告げる。

…解ってはいたけど、胸が苦しい。

「…っ…そ…っか」

笑う事に失敗した。

少し飲み過ぎたのかもしれない。

…涙腺が、やけに緩い。

「成歩堂…?」

「ぃや…ごめん。ちょっと飲みすぎた」

「たかが2杯でか?」

「体調悪くて…」

 


嘘をつくな、と。

御剣の瞳が告げていた。

気づいてる。

判ってる。

けれど御剣は、その話には触れずに。

代わりに、ため息一つ。

「…行くな、だとか戻って来い、と…言わないのだな」

何を言ってるんだ、と。

心から思う。



 


どんな想いでその言葉を言わないでいるのか。

知ってるんだろうか、この男は。


「…お前のしている事に口出しする程、無神経じゃない」

「…キサマの意見を聞いている」

「…っ…」

 


言える、筈が無い。

成歩堂の唇が、「行くな」と形どって。

音にするのを止める。

言葉の及ぼす影響は大きくて。

紡いでしまえば、取り返しのつかない事になりかねないから。

 


「…正直な所…迷っている」

「…何、を?」

しばらくしても言葉を紡がない成歩堂の様子を窺って、御剣が口を開く。

「……キミが、何も言ってくれないと…私は、何処へも行けない」

 


…話が、見えてこない。

怪訝な色を浮かべた瞳で御剣を見ると、居心地が悪そうに顔を叛ける。

「…何?」

「……」

2人に降りる沈黙。

言い淀む御剣の表情は、真剣そのもので。

「…御剣?」

「……キサマに…」

「…」

「…私は、必要ないのかと訊いているんだ……」

 

 

 →2

 

何だか書き始めたら最初思っていた話と全く違うものに…(汗)。
はじめはタイトルも違ったうえにあっさりしてる予定でした。
こんなに長くなるとは思っていませんでした…(汗)。
すみません、続きます。

時間軸的には3の後です、一応。