然すれば、闇
然すれば、闇

激痛に喘ぐように目が覚めた。
ほんの少し頭を動かそうとしたものの、酷い痛みにそれすら適わず。
次いで、手足の自由を奪われて、転がされている事に絶句した。
「…起きたか」
「…っ…」
聞き覚えのある声。
仰ぎ見ようとするよりも早く、声の主に至近距離で顔を覗き込まれた。
「動かない方がいいんじゃねぇ?痛いだろ」
「……何のつもりだ、魏将軍」
鼓動に合わせて痛む頭は、恐らく殴りつけられた所為なのだろう。
陳宮は、怒りも露に魏続を睨みつけ。
けれど、魏続は全く意に介する様子もなく、まるで嘲笑うかの如く、口の端を吊り上げた。
「形勢はどう見ても不利。…ならさっさと曹操に降った方が利巧だろ」
反論しようにも、頭が朦朧とする。
「…愚かな…」
吐き捨てるように呟くと、魏続が不意に陳宮のおとがいを指で掬い上げた。
「…聡いアンタなら少し考えれば解るよなぁ?」
このまま引致される事も。
それを拒む事が容易くない事も。
囁くように告げられて、思わず舌打ちをした。
その様を魏続は面白そうに眺めて。
「大人しくしてれば、これ以上手荒な事はしない」
「…これだけやっておいて、今更…」
「寧ろ、この状態でその程度ってのに感謝なんじゃねぇの?」
そう言って軽く鼻で笑う彼の表情は、何処までも残酷で。
そして。
何処か、憂いを断ち切ったように清々としていた。
綺麗だと思えるくらいに。







本当はこれ西涼で一番初めに書いた話でした…(苦笑)。
修正しましたが、がつんと魏続×陳宮だったのでした…。
色々突っ込み所が満載なのです…。
すみません…。