裏切り

与えられれば与えられるほど離れられなくなるのに。
その度に枯渇していくような。
どうしようもなく貪欲な本能に、為す術などなく。
無くては生きていけない程の存在が消える事が怖いと、ふと思ったりもした。


「…裏切ったら、道連れな」
幾度となく交わしている口づけを不意に遮って。
魏続が、囁くように侯成の耳元へ吹き込む。
「…何の話だ」
「言葉のままだ、馬鹿」
そう言って鼻先に軽く噛み付くと。
「…裏切るかよ」
返す侯成の声が存外真剣で些か調子を狂わされた。
「…断言?」
「俺は、お前がいればそれでいいし」
至極真面目に告げられる言葉に、驚いて思わず目を瞬かせ。
「……本当に馬鹿か」
ぶっきらぼうに言い放った魏続が、そのままふいと顔を背ける。
耳まで赤く染まった顔を見せるなんて、絶対出来ない。

直接的に伝えられる彼の想いを。
与えられれば与えられるほど離れられなくなる。
けれど、絶対に口には出さない。
絶対に、伝えない。





バレンタインということで…。
甘い感じがいいな〜と思ってたらこんな事になりました。
ごめんなさい…!

皆様が素敵なバレンタインを過ごせますように!!

2007.02.14