trick and chocolate☆

 

部屋いっぱいに広がる、甘い香り。

香りの原因は、2人で食べるチョコレートフォンデュ。

溶けたチョコレートの甘さと、フルーツの爽やかな甘さが口に蕩ける感触。

「何か、贅沢だよね。…本当に、幸せ」

「…ああ」

成歩堂が嬉々としているのを見て、御剣がつい微笑む。

正直。

この無邪気な笑みには、弱い。何だか、とても。

「…あ、そうだ」

そんな事を考えていると。

ふと。

成歩堂が何か思いついたように声をあげて。

嫌な予感を覚えつつ、御剣が訝しげな視線を成歩堂に投げかけると。

おもむろに。

成歩堂は溶けたチョコレートを、自分の人差し指に絡めて。

「…御剣、はい」

御剣の口元に差し出す。

「…」

「嘗めて?」

「何故そんな事をしなければならんのだ」

「せっかくのチョコレートフォンデュだよ?」


有効活用しないとね。

と囁く声は、悪戯じみた声色で。

得意げに片腕で頬杖までついて。

ニコニコと人差し指を差し出さすサマにどうしてやろうか、と思う。

悪戯なのは、解っているし。

からかっているのも解っている。

御剣の反応が見たいだけらしい行動は、放っておけば自分から折れるのだけど。

 


あえて。

差し出された手を捉えた。

「え…」


たじろいだ成歩堂をそのままに、人差し指に唇を近づけて。

つ、と人差し指を舌先で嘗め上げる。

「…ッ…」

 


息を呑む気配がする。


指先にちゅ。と音を立てて口付け、味わうようにゆっくりと口に含んで。

まるで、行為のトキそのもののように舌を絡める。

そのまま、上目遣いで成歩堂を見遣れば。

狼狽していながらに欲情の色があからさまな瞳と視線がぶつかった。

劣情を煽るのに十分な御剣のその行為が、姿と口内の感触でそれ以上の事を連想させる。

もっと深く咥えさせようと、御剣の頭に柔らかく触れると。

 


再度、ちゅっという音を立てて唇が離れた。



「…満足したか?」

「…え…え?」

思考がまるでついていかない様子の成歩堂が戸惑う。

引っ込みのつかなくなった手が、宙を彷徨って。

「…嘗めろといったのはキサマだろう」

「…いや、そうなんだけど」

「美味しかったぞ」

「………続き、は?」

しばしの沈黙。

御剣は、苺にチョコを絡めて。

「何の、だ?」

ふと、意味ありげに微笑んで。

さらりと言ってのけるとそのまま苺を美味しそうに口に運ぶ。

「……」

つまり。

彼は本当にチョコを嘗めた、だけで。

 


彼の悪戯の方がよっぽど性質が悪いのだと。

成歩堂は身をもって知る事になったのだった。



何だか本当にわけのわからない話になりました。
すみません。
だから何?って話になってしまってます…。
VDだから、というわけではないのですが。
チョコレート話になってしまい…。
色々すみません。
更に別人で申し訳ないです…。