桃花水


「辛い時が、あるんです」
色素の薄い口唇が、小さく動いた。
彼にしては随分弱気な、珍しい発言に羊祜が首を傾げる。
「何がですか」
「背負っているものをふと顧みると…それが余りに大きくて」
「…全てを背負う必要はないでしょう」
「失望させたくないんです。…父も、父を知っている人達も」
恐らく、それが一番の心の負担。
彼が、無理している事実を感づかせない事が得意なのも知っていた。
「あなたが全てを背負う必要なんてありません」
「…でも…」
納得の行かないような顔をしている陸抗を引き寄せる。
諭すように、ゆっくりと頭を撫でて。
「幼節殿の父君に嫉妬しそうです」
苦笑しながら呟くと、腕の中の陸抗が意外そうに目を瞠る。
「…思いがけない言葉を聞きました」
「存外、独占欲は強いんで」
その言葉を聞いた陸抗が微かに微笑んで。
「…私もです」
囁く声に、お互い思わず笑った。










どっちだか解らなくなりました。
どっちも好きです(何)。