宵々

盛大な宴の後。 賑やかさが過ぎた後の何処か淋しい空気と、静けさを取り戻した、穏やかな空気。
そのまま自室に戻るのも何だか忍びなく、孫策と周瑜は二人で杯を重ねていた。
「…綺麗だな」
熱を孕んだ声で、孫策が呟く。
「星か?」
盃を一度置いて、周瑜は窓際へ移動した。
涼しい風が吹き抜ける窓から空を見上げると、月は朔。
満天の星は、確かに美しい。
「…じゃなくて。公瑾、お前だ」
ここから星は見えねぇよ、と。
孫策は、空を仰いでいる周瑜を後ろから抱きしめて囁いた。
「…飲みすぎだ。酔っ払い」
「酔ってなんか、いない」
「だとしたら、尚更性質が悪い…」
「公瑾」
廻された手を払おうとすると、一層きつく抱きすくめられる。
「…場所を考えろ」
「誰も来ないと思うけど」
「一度、君理殿に見られているのを忘れたか」
眇めた目で問われて、孫策はまるで子供のようにあからさまに拗ねた顔をして見せた。
「…じゃあ、接吻だけ」
「往生際が悪いぞ…」
呆れたように嘆息する周瑜の、それでもどこか許してくれている空気を感じ取って。
「そんなの、知ってるだろ」
こっち向けよ、と。
強引に身体の向きを変えさせて、向かい合う。
そして、おもむろに重ねられた口唇も、触れ合う身体も。
酒の所為か、もしくは他の理由か熱を孕んでいて。
再び吹き抜けた涼風が、とても心地良い。
何度か啄ばむように重ねられた接吻は、少しずつ深くなって行く。
そんな二人を。
開け放された窓から、星が見ていた。





色々難産だった話…。