眩しく輝く月は、欠けていた。
思い出されるのは、肌を滑る掌。
涙に濡れた頬を優しく辿る舌先。
そして、荒々しく打ち込まれた楔。
まるで、高熱に浮かされている気分だった。
あの日一度だけ、彼に抱かれた事実が。
ずっと消えずに、今も胸に灼け跡として残っている。
なんて事はない。
戯れの相手にされただけなのだろう。
そう思うと、苦々しい気持ちが広がった。
いつまでも、消えない記憶なのに。
そんな事など、既に覚えてもいないだろう、あなたに。
もう少しで、会える。