口許

美味しそうに酒を飲み干す姿に、一瞬見惚れた。
見惚れた、というよりは。
目を留めてしまったというべきか。
濡れた口唇と飲み下す仕草に、あらぬ事を連想した。

口元に注がれている視線に気づいたのか、鍾離牧が目を眇める。
「……何想像してんだ」
「…言えないようなコト」
「殴らせろ」
「…口でシてくれるなら、一発どうぞ」
軽口のつもりで。
徐盛が余裕で紡いだその言葉に、鍾離牧が勝気に笑った。
「…二言はねぇな?」
「…は?」
面白そうな色を湛えた鍾離牧の言葉に。
まさか、そんな反応が返ってくると思っていなかった徐盛が僅かにたじろぐ。
「終わったら思いっきり殴ってやる」
「…溜まってんのか?」
「…日頃の恨みがな」
呆れ混じりにそう呟いて肌に触れた彼に、劣情を煽られつつ。
「…殴られんの、怖くなってきた…」
「偶には痛いのもいいんじゃねぇ?」
「…痛くされて悦ぶ趣味はねえよ」
「どうだか」
そう言って悪戯っぽくゆっくりと舐め上げる、その舌に、その口許にどうしようもなく熱くなる。
軽口を叩く余裕も無くなりそうなほど。





裏じゃなくていいじゃん、と書きあがってから思いました。
あまりにぬるすぎてごめんなさい…!