under THE  meteor OF white

…憮然とした。

訳の解らない事で追いかけられて。

逃げ場もなくなっていて。

必死の弁解も当然、納得してもらえるわけもなく。

 


そんな時。

不機嫌な空を華麗に横切る真っ白なハングライダー。

警察一同がざわめく中。

…一番パニックに陥っていたのは、新庄だった。と思う。

 


新庄の悲痛な叫びが警察一同に届いたのかどうか、それは解らないけれど。

ハングライダーを目指して、警察は散る。


「……助かったぁ…っ」

思い切り脱力。

力の入らない体は今にも崩れそうで。

はぁ、とため息。

でも、こんな所にいてもしょうがない。

ついでに早く降りないと、噴水に落下しそうで。

ふらふらになりながら、ゆっくりと地に足をつける。

「…戻ろ…」

幸い、天気も先刻より良くなった。

必死で飛ばしてたらとんでもない所まできてしまったと思う。

 


…リアルドロケイカーチェイスなんて、きっともう一生経験できないだろう。

なんて。

変な事を考えながら車を走らせる。



「大体、何でこんな事になったんだよ…」

思わず、呟いた。

第一、皆はまだ着かないのだろうか。

っていうか、皆が着く前に自分が別荘に着かなければならないのだけど。

「全くもぉ…」

思わずこみ上げる涙。

視界がわずか霞んで、車の速度を落とす。

 




不意に。

「お疲れサマ」

耳元に、柔らかい声が響いた。

「ぅわ!!」

驚いて、手放しに叫んで。

咄嗟に、急ブレーキ。

後ろに車がいなかったのが、幸いという所か。

タイヤが悲鳴を上げて、ストップする。

「わぉ、ダイタン」

…状況とこの原因を知ってか知らずか。

冷やかしの口笛でも聞こえてきそうな口調で呟いて。

ふわり、と。

いつもの奇術。

いつの間にか。

音すら立てずに、車の助手席に乗り込んでいたのは。

新庄と同じく、真っ白な格好をした。

…ホンモノ、で。

「……キ…っ…」

イリュージョンさながらの現れ方をして、いつの間にか助手席に人がいたことに対してか。

それとも、ホンモノのキッドがいる事に対してか、それは解らなかったけれど。

言葉を失っている新庄に、キッドは微笑んでみせる。

「…割と似合ってるぜ、そのカッコ」

「……」

しっかし、俺に変装なんてダイタンにも程があるよな。なんて付け足して。

新庄の顔を覗き込むも、何も言えないままの彼に苦笑さえ覚える。

「…泣いちゃってるし。可哀想に」

そう言うと、キッドは。

ちゅ、と。

涙を掬い取るように、新庄の目元にキスをする。

何をされているか、すぐには理解しきれなかったらしく。

「〜ッ!?」

新庄が、ワンテンポ遅れて硬直する。

 


それが好機というか…ついでというか。

キッドはそのまま、新庄のおとがいを指で持ち上げて。

クチビルに、触れるだけのキスをした。

 

 


時が、止まる。

 

 


クチビルをゆっくりと離して、新庄の顔を至近距離で覗き込むと。

唖然としている割に徐々に赤面していくサマが、何だか面白い。

 


「…何、を……」

 


「…では、また」

「……っ」

顔に柔らかい笑みを浮かべて、キッドは新庄からそっと離れた。

そして。

さっきと同様、イリュージョンさながら。

ぽん、という軽い音と共に。

キッドは車の中から消え去った。

 


残ったのは、相変わらず唖然としている新庄と。

何処か柔らかいような、それでいて冷たい残り香。

 

 

 


「……また、会う機会なんて…」

あるわけないのに、なんて。

ずれた事を呟く事しか、出来なくて。

車から見える、何も見えないような夜空に。

真っ白な、ハングライダーが軌跡を描くのが見える。

 

 

 

 


クチビルの感触が、いつまでも離れなくて。

バックミラーに映る自分の姿に。

思わずさっきの状況を思い出して。

一人でまた赤面、した。

 

 

 

書いてしまいました…(汗)。
銀翼の奇術師。KID×新庄です…。
公開用というよりは自分の萌えの補完のために書いたものです。
UPするか迷っていたのですが、せっかくなのでUP(苦笑)。
自分補完用なので文章がめちゃくちゃです…。すみません。
KID×新庄は本気というよりは、今回は悪戯というかんじで。
新庄さんのイメージが泣いてるイメージしかなかったためこんな弱弱しい彼になってしまいました…。
すみません。
むしろ2人とも別人ですみません(汗)。
タイトルは「白い流星の下で」という事で(汗)。