月明かりに照らされて白さの際立つ肢体に、ゆっくりと手を回した。 驚いたらしく、反射的に抵抗しようとしたその腕ごと抱きしめる。 「何を…」 酷く怪訝な声色は、腕におさまっているせいで諸葛瑾から見る事の出来ない表情までが安易に想像出来るほどだ。 「可愛いなと思ってね」 「……何ですか、それは…」 「…真っ直ぐだねぇ、陸遜ちゃんは」 まるであやすように耳元で囁く言葉には、労わりや慈しみのような色が含まれていて。 それに気付いた陸遜は、その腕を振りほどく事はせずに。 そのまま、暫くの間その腕の中にいた。 冷たい印象を与える月の光の中。 ややあって。 すみません、と。 控え目に謝罪の言葉が口唇から零れた。 諸葛瑾の行動が、陸遜の心境を思って同情した故のものだとでも思っているのだろう。 謝るのは、寧ろこちらだと。 諸葛瑾はその肢体を抱きしめながら思う。 誰かに縋りたいと思ったのは。 もしかしたら自分かも知れないのに。 |