「陸遜ちゃん」 まるで、透き通るような。 聞き覚えのある声で、不意にそう呼ばれる。 陸遜が返事をする前に、頭に手を乗せられて。 そのまま髪を弄ぶように頭を撫でられた。 「……あの」 控え目に言葉を発して、無意識に上目遣いで彼を仰ぐ。 さながら困惑しているような表情と瞳に、思わず笑みが零れた。 「…あたしじゃなくて弟だったら、そんな困ったようなカオしないんだろうけど」 その視線を受けた諸葛瑾が、面白そうに呟く。 「な…」 過剰な程に反応して、動揺しているその様子が可愛いと思う。 頭を撫でていた手をゆっくりと放すと。 弄んでいた髪は抵抗もなく滑り落ちて、何事も無かったかのように風になびいた。 「目は口ほどに、ってね」 隠し事が出来ない程、真っ直ぐな瞳に。 僅か、羨望の様な想いが胸を過ぎった。 気付くことの無い程心の奥底で。 |