かたおもい

全てを捧げて尚足りない位、ただ想う。
恋よりも永く、愛よりも深いこの気持ちを。
抱き続けて、手に負えず。
手放すことも出来なくて、そのまま燻り続けている。

はあ、と。
そんな、埒が明かない事を考えて。
無意識なため息を吐いた、その直後。
「…糜竺。悩みでも?」
「っ!?」
突然掛けられた声に、驚く。
声を上げる寸での所で抑え、声の主を見遣った。
「…殿、何故ここに」
「書庫に用があってな」
何も劉備自らが出向く事では無いはずなのだけれど。
彼はよっぽど多忙の時以外は自分の足で行動してしまう。
それが良い事なのか悪い事なのかは別にして、誰が言ってもやめないのだから仕方が無い。
「私が行って参ります」
糜竺の申し出を、それよりも。と受け流して。
劉備は暫し考えて、口を開く。
「…恋煩い」
「…何故そうなります」
「何となく」
唐突な言葉に、すぐには理解できず。
少しの逡巡のあと、ため息の理由の事だと気づく。
よもや、自分が当事者だとは微塵も思っていないような興味混じりの声色に。
図星を指された事に対しての焦りよりも、呆れが先立つ。
思わず、その言葉を肯定して、抱きしめてやろうかと。
刹那本気で手を伸ばしかけた。
行動に移さなかったのは、触れてしまう事の恐ろしさゆえ。
「…違います」
内心を押し殺して、ため息と一緒に呟くと。
「体調でも優れぬか」
心配そうな色を塗した声。
この声に、弱いと自分で思う。
「…寝不足です、ただの」
「お前は、自分に無頓着すぎる」
「そんな事は」
ありません、と続けようとして出来なかった。
「糜竺」
小さな声で、劉備が呟いて。
武人として、そして成人の男としてはあまりにも華奢な手が。
す、と伸びて糜竺の頬に添えられる。
少しだけひやりとした感触に、酔い心地になる前に。
その指が糜竺の頬を、軽く抓りあげた。
「ちょ…」
「私には散々自愛しろと言う癖に。お前こそ自愛せよ」
殿の御身と臣下の身を一緒に考えるなと、怒る所なのだろうが。
そんな事を考える事が出来ない位、劉備の行動に翻弄される。
彼にしては全く他意の無い、何気ない行動なのだろうけれど。
正直、どうしようもなく心臓に悪い。

あと、ほんの少しの距離。
華奢な身体を引き寄せるだけの勇気があれば、全てが変わるのだろうか。

恋より熱く、愛よりも尊いこの気持ちを。
抱き続けて持て余し。
手放す事が出来ずにいるから、今日もただ想う。









GOサイン出して頂いた挙句、素敵な二人の小説まで書いてくださった素晴らしいお方に触発されて勢いだけでがーっと…。
駄文にしかならずにすみませ…!
どうも最近糜竺がブームなのです。

そして蛇足。
最初壁紙がさくらんぼだったんですが(笑)ギャグにしかならなかったのでやめました(笑)。