熱請
圧倒的不利な戦況。
敗北は火を見るよりも明らかな現状に、まるで現実味がないのも確かだ。
「なぁ、侯成」
「何だ」
「…お前と一緒ならここで終わるのもアリかもな」
そう呟く魏続の口調はいつもと変わらず。
けれどどこか本音を滲ませた声色で。
「…馬鹿か」
侯成は、思わず呆れた口調で呟くと、そのまま勢い任せに魏続を引き寄せた。
ほとんど倒れ込む形で侯成の腕の中に収まった魏続は、不本意だとばかりに下から睨め上げる。
「オマエに言われたくねえよ」
「…そう思うなら戯言は止めろ」
「結構本気なんだけど」
自嘲じみた笑みを封じるように、きつく抱き寄せた。
更に近くなった距離で、その魏続の耳元で。
「一緒に居たいなら生きるしかないだろうが」
まるで諭すように、囁きかける。
「……そんな事いつ言ったよ…」
呆れたフリを装った声は、動揺を隠し切れずに絞り出したような声色で。
「生きるぞ、一緒に」
「…人の話聞いてねえし」
不満げに呟くものの、侯成の柔らかい声色は心地良い。
そして、少し癪ではあるけれど。
彼の体温に身を委ねるのは嫌いではない。
「魏続」
「…仕方ねえ。乗ってやるよ」
ため息を一つ。
その後、そう言って腕の中で勝気に笑ってみせる。
それも、悪くないと。
口には出さないけれど。