an accuser

 


どうして皆こんなに不器用なんだろう、と。

思わず苦笑してしまう。

人の事は言えないはずだけど…それでも。



その、寂しげな瞳。

諦めたような、それでいて羨ましそうな視線。

…仕事に関してはエリートなのにな。

ため息をつきながら、コナンは内心そう呟いた。

「…ねぇ、警部さん。…どうして素直にならないの?」

刹那、ぎくりとしたような表情を見せ…次の瞬間にはポーカーフェイスを装って。

迷惑そうな顔つきで、隣の子供と視線を合わせる為に屈みこむ。

「…坊、何言うてはる…」

「よく解らないけど…好きなんでしょ?白鳥警部の事」

「っ…君な、大人をからかうものやあらへんよ」

いつもよりいささか言葉が丁寧なのは牽制か。

…しかし、慌てているのは火を見るより明らかである。

うろたえているのを隠しきれていない。

けれどそんなもの気にもせずにコナンは続ける。

「…からかってるわけじゃないんだけど…」

少し困ったようにそう告げて。

そして、綾小路の左ポケットにいるシマリスに同意を求めた。

「ねぇ?『白鳥くん』?」

と。

瞬間。

シマリスがコナンにすり寄るのと、綾小路が驚きのあまり声も出せず硬直するのが一緒で。



その一角だけ、時間が止まった…気がした。

周りのざわめきがうるさいほどで。

少し遠くにいる白鳥と高木が話している声が聞こえた。…確かに。

「な、ななななな…っ!?」

硬直から解放された綾小路は、しかしかなり焦っているらしく、言葉という言葉は話せないでいる。

更に、顔が青ざめているのが一目瞭然で。

…こんなにわかり易くていいのか、京都府警。

むしろ、普段あれだけ冷静な彼をここまで追い詰める程の事だったらしい。この話。


「…ちょ…ちょっと落ち着いてよ…」

「落ち着いてます!」

何処がだ、とつっこみたくなるのを抑えて。

とりあえず綾小路が少し落ち着きを取り戻すのを待って。

「……坊……」

もう、何を言っていいのか解らなくなっているらしい綾小路を、コナンは近くの椅子に座るように促す。

「…あのシマリスってさ、警部さんの親友なんでしょ?なのに外では名前を一度も呼んでないよね?

…それっておかしいと思ったんだ。実際、皆も『シマリス』って呼んでたし」

「…」

何も言う事が出来ないらしい。

そんな綾小路を視界の端に捉え、コナンは尚も言い募る。

「動物を飼うのに名前を付けない人なんて滅多にいないよ。警部さんみたく大切にしてる人なら尚更。

…じゃぁ、何で『シマリス』って皆が呼んでる時に訂正しなかったんだろう?

って考えたらね。…皆の前では呼びにくい名前なのかなって思ったんだ」

「…せやからって、名前までどうして…」

「このこがね、誰かが白鳥警部を呼ぶ度に反応してその方向を見てたから。

…きっと、自分の事を呼んでるんだと思ってたんじゃないかな」

…それに。

貴方の視線を見ていれば、嫌でもわかりますよ、それは…。




その一言は、言わずに胸の中にしまって。

綾小路を見ると、まるで犯行を見破られた殺人犯のように項垂れていた。

そして、コナンが白鳥を見ると丁度高木と話を終えた所らしく。

「ね、警部さん。…白鳥警部は信じてもいいと思うよ?」

呟く言葉。

…もう、子供の戯言だなんて、言えない。

「…全く…最近の子供は…」

苦笑というより、泣きそうな顔。

笑顔を作るコナンに、綾小路は笑顔を返す。

「感謝しますわ。…名探偵くん」


どうして、こう。

俺の周りはもどかしいんだか…。

 

 

「迷宮の〜」の後位の話でしょうか…。
実は大好きなんです、綾小路警部…。
白鳥さんと同じくらい(笑)。
勝手に捏造してしまいました…ごめんなさい!!