「…兄様は、少し無理が過ぎます」

勝ち戦の後。

孫堅が鎧を脱ぐのを手伝う孫静は、先程の戦で負ったらしい傷を孫堅の頬に見つけて、眉を顰めた。

「…ただのかすり傷だ」

全く何でもない事のように告げて、孫堅は軽く笑う。

「だとしても…ご自重ください」

思いがけず、その声が重たいもので。

気になって、孫堅が孫静の顔を覗き込むと、まるで泣くのを堪えている様な憂いの表情。

真剣にこの身を思ってくれたのだと、潤む瞳に気づかされた。

「……心配、させたな」

すまない、と。

至近距離。

孫静の耳元で優しく囁くと、そのまま彼の身体を抱き締める。

「……兄様の、馬鹿」

孫堅の腕に抱かれて気が抜けたのか、そう呟く言葉は微かに涙声で。

そんな孫静の頭を優しく何度か撫でると、孫堅は、孫静の涙に濡れた目元に口づけた。

ちゅ、と音を立てて離れる口唇を追うように孫静はゆっくりと顔を上げて。

その時に気づいた、塞がり切っていない傷口に滲む赤。

孫静は、痛々しげにそれを見て。

躊躇いもなく、孫堅の頬に滲む血を舐めとった。

孫堅は不意の出来事に一瞬驚いて、言葉もなくその様を眺める。

肌に赤い舌先が触れる感触と光景に、理性が揺らいで。

そっと、孫静のおとがいを捉えて瞳を覗き込むと、ゆっくりと口唇を重ねた。





続くかもしれない話。
続くとしたらきわどめになるかと…。