「…沢田綱吉」
「はぃ!?」
いつもより1トーン低い声。
フルネームでツナの名を呼ぶ雲雀に、ツナは言いようのない
殺気を感じて、肩を震わせた。
「言っておくけど、跳ね馬は僕のだから」
「え、あ、はい?」
「手なんて出させないからね」
怯えて上擦る声を隠せずにいる彼を睨めつけたままで、
雲雀が紡いだ言葉の意味をいまいち理解できなかった
(というより、正確には突然の発言に、
思考回路がついていかなかったのだが)
ツナのことなどお構いなしに、
雲雀がきつく言い放つ。
「…って、何言ってんですか雲雀さん!ありえないですから!」
雲雀の言葉を頭の中で反芻。
ディーノが雲雀のモノである発言は後で考えるとして、
訳のわからない状態に巻き込まれそうな事にようやく気付き、
ツナが大声で反論する。
どうやら、ディーノがツナの救援に来た事に対し、
目の前の端正な顔立ちの彼は相当怒っているようだった。
つまるところは、ツナに対する嫉妬。
いつも、飄々として余裕しかみせない雲雀が、
ツナ相手に、直接的な言葉で牽制をしてくるほど余裕の無さ。
珍しい、と正直に思う。
と、共に、何かの拍子で本気で殺されかねない事に気付き、
ツナは改めて全身の血の気が引くのを感じた。
とりあえずは。
頼れる兄的存在
(頼れるかどうかは時と場合によるという事実は、この際は別問題だ)
というだけで、雲雀が嫉妬するような思いは一切持っていない、と。
弁解の言葉を、どう伝えようか。
ツナは、必死に頭を巡らせ始めた。