照りつける日光が眩しいのか、眉根を寄せて寝返りを打つ。 ちょうどこちらを向いたので、悪戯心で鼻先に口づけた。 深い眠りについているらしい隻眼の男は、全く起きる様子はなく。 武人が、そんな事で良いのかと疑問に思う反面。 それだけ気を許してくれているのだという微かな喜びがあるのも事実。 口元に微笑みを湛えて、夏侯惇の寝顔を見つめた。 自分と似た色の金の髪が、陽射しを受けて綺麗に光るのが、少し眩しい。 そんな事を思いながら、頬に口づける。 二度三度繰り返しても起きないから、今度は直に口唇に。 ゆっくりと口づけて、触れただけで離れた。 柔らかい感触に、誘われるようにもう一度口づけようとした刹那。 思い切り手首を引かれ、そのまま前のめりに倒れこみ。 状況を把握する前に、眠っているはずの彼に抱きしめられた。 「淵…寝込みを襲うな」 寝起きで掠れたままの恨めしそうな声が降って来る。 「…起きない方が悪い」 しれっと告げると、憮然とした表情。 「誰のせいだ、誰の」 好き勝手しやがって、と呟く彼の鎖骨には鬱血の痕。 他にもいくつか残っているだろう紅い印に、今更ながら狼狽えた。 自分でつけたものであるにも関わらず。 眩しい太陽の下で見るそれは、酷く背徳を感じさせる。 僅か赤くなった夏侯淵に気づいているのか否か。 「今日は覚悟しろよ…」 夏侯惇が悪戯っぽい顔で囁いて、口づける。 敵わないと、そう思った。 |